なぜ筋肉痛が起きるか

ランニング後に筋肉痛が起こるのは、筋肉がダメージを受けていることでもあると思うのですが、筋肉痛というのはどういうメカニズムで

起きるのでしょうか。ランニングを行うと、筋肉の収縮と弛緩、さらには接地の際の刺激などにより筋線維に小さな断裂が起こります。このような筋損傷が起き

ていることは、筋細胞内にあるはずの酵素が血中に出てくるのを観察することで確かめることができます。運動により変動する酵素としてはクレアチンキナーゼ (CK)という酵素がよ

く知られていて、大学や実業団の陸上部では、選手のコンデイション管理の目的でよく測定されています。 マラソンを走ったときの血中CKの推移を見てみましょう 。

マラソン後 にCKは上昇しています。ところが、それよりもその翌日にとんでもなく高いピークが存在します。

マラソンによって筋組維が壊れて CKが出てくるというのはわかりやすいのですが、走り終わってもう運動していないのに、なぜこんなに筋肉の中の酵素が血中 に出てきてしまうのでしょう。そう、これこそが筋肉痛の原因になっている現象なのです。

ランニングを行うと、体は「緊急事態」モードになります。交感神経が刺激され、筋肉への血流が増えるとともに、消化管への血流は減少し、さらに筋肉では新たにモノを作る

同化作用はストップし、逆に蓄えていたグリコーゲンやタンパクを分解し、グルタミンとして全身へ供給する異化作用が活発になります。このような「緊急事態」には、免疫細胞

も刺激され、活性化した白血球が骨髄からどんどん血液中に飛び出してくるのです。通常、血液中の白血球

数は 4000 ~ 6000くらいですが、ハーフマラソン後には l万以上にまで増えます。これは風邪をひいたり 、ケガをしたりしたときと同

じで、体はランニングの刺激を 、外部からの攻撃がある状態だと思って反応してしまっているのです。

ランニングの場合、やる気マンマンで骨髄から飛び出してきた白血球は、 全身を巡りながら外敵を探します。ところが、そもそも攻撃を受けていないのですから戦うべき相手がいません。

それでも、細胞が壊れて中身が飛び出している場所があるのを見つけます。そう 、それがランニングにより筋線維が損傷している、筋肉(骨格筋)なのです。

白血球は筋損傷の起きているところに集まって、見えない外敵を攻撃し始めます。

そのため、炎症が引き起こされ 、筋細胞膜が壊れて中身が血中に出てきてしまうのです。

白血球の場合、いったん、緊急警報で骨髄から飛び出してきてしまうと、敵がいないからといって、また元の骨髄へ戻って休むということができません。そのために、こんなことが起こってしまうのです。このように運動後に起こる筋肉の炎症が、翌日の筋肉をこわばらせ、そして翌日・翌々日に 知覚神経を刺激して筋肉痛を引き起こしているのです。