膝関節伸展制限(屈曲拘縮)の改善

変形性膝関節症に限らず、膝関節に何らかのトラブルが生じている場合、膝関節の伸展制限(屈曲拘縮)が認められることが多い。膝関節の伸展制限は膝関節のアライメント不良による痛みを引き起こすとともに、下肢の動きを制限させ、QOLを著しく低下させる。従って膝関節に伸展制限が生じている場合は、まずは何よりそれを改善することが重要となる。特に変形性膝関節症の場合、ほとんどのケースで膝関節の軽度伸展制限(屈曲拘縮)が認められることが報告されている。ちなみに、変形性膝関節症の治療として保存的治療が適応される場合には、大腿四頭筋の筋力強化が標準的治療法として用いられ、その効果が認められている。

しかし、大腿四頭筋の筋力を強化しでも、膝関節の伸展制限が解消されることはなく、膝関節の伸展制限を改善する明確な効果を持つ方法は、まだ明らかにされていなし、。膝関節の伸展制限が生じる原因は、関節構成組織の拘縮よりも、膝関節に関与する筋の柔軟性が関与していることが多い。このことから、膝関節の伸展制限を改善するためには筋の柔軟性を高めるストレッチングが有効な手段になるのではないかと推察される。

関節軟骨の4段階で分類

前期: 関節軟骨の変性がみられ、衝撃服収力が低下する

この時点では、レントゲン画像においても特徴的な変化がみられず、「膝に違和感を感じる」といった程度で放置されやすい。また、膝関節可動域の減少や膝関節付l筋群の筋出力低下に気付かないことが多い。この時期にリコンデイショニングカf開始できれば、その後の進行をf確実に抑えることが可能となる。

初期: 関節軟骨の変性が進行し、関節軟骨がすり減り始めるとともに、骨親や骨堤などの変化がみられる

初期!の段階まで進行すると、階段の上り下りなどで痛みを感じることが多くなり、医師の診断を受ける人が増える。また、関節水症を引き起こし膝関節に腫れが生じたり、いわゆる「水がj留まるJといった症;1犬が頻繁にみられるようになる。この時期においては積極的にリコンデイショニングに取り組み、その後の進行を抑えなければならない。

進行期: 関節軟骨のすり減りや骨輔、骨堤等の骨の変形がさ5に進行し、O脚といった変形がみ5れる

多くのケースでは膝関節の内側に荷重負荷が加わることにより、内側の関節軟骨だけがすり減り、oJjtlJ変形がみられるようになる。

進行期にまで症状が進むと、膝関節の可動性が著しく損なわれるとともに、動作時の痛み(可動時痛)が強くなり、日常生活に支障をきたすことが多くなる。

関節軟骨等は、一度変形してしまうと元に戻すことは難しいとされている。徒って、この時期におけるリコンデイシヨニングでは、症状(特に痛み)を緩和させるとともに、生じている機能障害を取り除き、さらに「今ある機能を高める」ことを目的とする。

末期: 関節軟骨が完全にすり減り、軟骨下骨が象牙質化してしまう

末期の段階まで進行すると、O脚等の変形や可動制限が目立つようになり、移動時には杖が必要になるなど、日常生活に支障が生じる。

この時期におけるリコンディショニングでは、進行期と同様に、症状(特に痛み)を緩和させるとともに、生じている機能障害を取り除き、さらに「今ある機能を高める」ことを目的とする。

変形性膝関節症とは

変形性膝関節症の予防、改善を目的としたリコンテーィシヨニングフ。ログラムを提供するためには、まずは何よりも変形性膝関節症に関して理解を深めなければならない。もちろん、パーソナルトレーナーは医師ではなく、変形性膝関節症の診断行為を行うわけではないが、この疾病に関して充分に理解していないと、適切なリコンディショニングプログラムを提供することはできない。そこで、以下に変形性関節症について簡単に解説していこう。

変形性膝関節症とは、大腿骨と頸骨が接する断端を覆う関節軟骨がすり減り、膝関節が変形してしまう整形外科的疾病である。加齢に伴う大腿山頭、筋の萎縮によって関節軟骨に過度な負担がかかり、関節軟骨の表面に傷がつくところから進行していくと認識されているが、変形性膝関節症の発症メカニズムは明硲に解明されているわけではない。これまでに報告されている仮説として、何らかの理由によって軟骨下骨に微小な骨折が生じ、その結果として関節軟骨に傷がつくのではないかというものもある。いずれにしても、大腿四頭筋の筋力低下、萎縮が関節11次骨に大きな負担をかけることは間違いなく、大腿凹頭筋の状態と変形性Jj奈関節症の聞には密接な関係がある。

包括的視点を持ってクライアントの身体の状態を評価する

前述した通り、一人のクライアントが複数の身体のトラブルや痛みを抱えていることも少なくない。そして、それらの身体のトラブルや痛みが一つの原因によって引き起こされていることも多い。

例えば、近年注目されている整形外科的疾病概念の一つに、骨盤交差症候群があるが、これによって腰痛と蓋靭帯炎が引き起こされる可能性がある。クライアントが膝関節の痛みを訴えパーソナルトレーニングを開始した場合、まずは膝関節の痛みを取り除くことを目的に大腿直筋の過緊張を緩和させるリコンデイショニングプログラムを提供することが多い。

しかし、このクライアントが骨盤交差症候群の状態を呈する場合、大!腿直筋の過緊張の緩和だけに目を向けていると、根本的な改善に至らず、再発を繰り返すことにもなりかねない。骨盤交差症候群は矢状面において骨撒の対角誠上に位置する筋の機能障害であり、腹直筋ー大殿筋の抑制、弱化、腰背部筋群ー股関節屈筋群の充進、過緊張を呈するのが特徴である。そして、これらの筋群密接な関係性を形成している。徒って、例えば股関節屈筋群の一つである大腿直筋の過緊張を緩和させるためには、腰背部筋群の過緊張を取り除くとともに腹直筋、大殿筋の筋力強化も必要となる。これらのアプローチがなければ、根本的な改善に至らないケースも多いのである。

このように、クライアントに対してリコンディショニングプログラムを提供するうえでは、身体のトラブルや痛みの原因を包括的な視点から捉える必要性がある。

痛みのコントロールと膝関節のケア

変形性膝関節症のリコンデイショニングプログラムを進めていく上で、実際の膝の痛みへの対処は非常に重要である。クライアントは痛みがあると非常に不安感を持つ。リコンデイショニングではクライアントのモチベーションを維持し続けることが成功の鍵を握っているといっても過言ではないため、不安を取り除き 、トレーナーやプログラムを信頼してもらうために、痛みをコントロールすることは非常に意義がある 。

痛みのコントロールにはアイシング、保温、サボータ一、ス トレ ッチ、マッサージ、誠灸、低周波、 赤外線、入浴など様々なものがあるが、特にアイシングはリコンデイシヨニングプログラムの前後における痛みのコントロールに有効である。

病院の診断は同じ変形性膝関節症であっても 、それぞれの症状、希望するゴール、クライアントの年齢や性格、他の病気や傷害などにより 、リコンデイショニングの過程が膝の腫脹と屈曲制限のある高齢の様々であることを表している。様々なリコンデイショニングのケースを知り自分なりの幅広い指導の形を作りあげるための参考にしていただければと思う 。

特に身体機能(ファンクション)に注目する

リコンデイショニングを実施するうえでは、人聞が本来持っている身体の機能に着目し、低下している身体機能を改善、向上させることが重要となる。すなわち、姿勢、アライメントや身体の動き、使い方に着目し、低下している身体機能を改善、向上させることによって身体の不調を改善することカfリコンデイショニングであるといえる。

医療保険の枠外で実施する

リコンディショニングは、医療機関で、の治療に至らないもの、または医療機関での治療が終了したものの身体の調子が回復しないものを対象とし、医療保険の枠外で行われる手段である。もちろん、身体の不調には様々な症状、状態があり、なかには治療が必要なものもあることから、リコンディショニングを開始する際には医師の診断が必要となる。

これらのポイントを踏まえて考えると、リコンデイショニングは医療機関で対応できない身体の不調等に対して、個々の身体の機能上の問題(課題)を見い出し、それを改善していく手段であり、それこそが、まさにパーソナルトレーナーが取り組むべき領域であるといえるのではないだろうか。以下に、リコンディショニングを目的としたパーソナルトレーニング指導のポイントについて述べる。